日々の生活にも大きく影響する厄介な住宅トラブルの一つ、排水管のつまり。
排水管のつまりはどの住宅でも起こり得るものですが、特に厄介なのが分譲マンションなどの集合住宅で発生する排水管のつまりです。
分譲マンションの場合、戸建てとは異なり、排水管のつまりに対する責任の所在も大きな問題になります。
この記事では、実際につまりが発生したときの対処法も踏まえながら、分譲マンションの排水管でつまりが発生したときの責任問題について詳しく解説していきます。
目次
分譲マンションの住宅設備で故障や修理が発生したときの責任分界点とは
住んでいる分譲マンションで排水管のつまりなどの住宅設備のトラブルが発生した場合、その住宅の買い主と管理会社・管理組合のどちらが責任をもって対処するべきかが大きな争点になります。
買い主と管理会社・管理組合のどちらが責任を持って対応するべきなのかを判断する上で知っておきたいのが、「専有部分と共有部分」「責任分界点」の2つです。
責任の所在を正しく判断する上で知っておきたい2つのポイントを、詳しく解説していきます。
分譲マンションには専有部分と共用部分がある
分譲マンションなどの集合住宅には、専有部分と共用部分があります。
専有部分とは、部屋の購入者が単独で所有している部分です。
住宅の内部が専有部分に該当しますが、住宅の内部設備の所有者は住宅の買主です。
そのため、責任の所在も買主にあります。
一方、マンションの各住戸の所有者がみんなで使用するスペースを共有部分と言います。
エントランスや廊下はもちろん、各住戸のドアやバルコニー、窓ガラスなども専有部分ではなく共用部分に該当する設備です。
これらの共用部分の責任の所在は、買い主ではなく、管理会社や管理組合にあります。
分譲マンションの責任分界点とは
分譲マンションの設備に対する責任の所在を考える上で重要になってくるもう一つの要素が、「責任分界点」です。
責任分界点とは、買主と管理会社・管理組合の責任の所在を表すものです。
設備の維持管理や修理をおこなう上で、どちらが責任を持って対処するのかを表したものが責任分界点になります。
排水管に関しては、給水立管からメーターまでを共用部分、メーターから先の部分を専有部分として捉えることが多くなっています。
排水管のつまりが発生したときの責任判断はそれぞれのケースで異なる
住宅の床下に設置されている排水管は、目に見えない部分に設置されていることもあって専有部分ではないと考えられがちです。
ただ、排水管が専有部分と共用部分のどちらにあたるかについては、それぞれのケースで異なるため注意が必要です。
一般的には、建物の構造体であるコンクリートスラブの下にある排水管は共用部分、スラブの上を通っている排水管は専有部分と捉えられる傾向があります。
古いマンションは排水管がコンクリートスラブの下を通る形で配置されていることが多いため、共用部分と判断されることが多くなっていますが、最近のマンションはコンクリートスラブの上に排水管が配置されていることが多く、専有部分と判断されることも少なくありません。
実際に専有部分と共用部分のどちらに分類され、どちらが責任を持って対処するべきかはマンションの規約によって異なるので、正確な判断はマンションの規約を確認しながらおこなうようにしてください。
分譲マンションの排水管がつまる原因
分譲マンションには、キッチンやトイレ、洗面台、浴室など、排水管につながっている設備が複数あります。
排水管がつまる原因は一つではなく、さまざまな要因によって引き起こされますし、それぞれの設備によってつまりの原因が異なることもあります。
実際につまりが発生したときに正しく対処するためには、つまりの原因を把握しておくことも大切です。
分譲マンションの排水管がつまる原因を、住宅設備別に詳しく解説していきます。
キッチンの排水管がつまる原因
キッチンの排水管がつまる主な原因としては、「油」と「食べかす」があげられます。
キッチンでの料理では油を使用しますし、食べ物には多少なりとも油が含まれていますが、油が冷えて排水管の中で固まると、排水管が狭くなり、水の流れが悪くなります。
この排水管の油汚れは徐々に堆積していきますし、油によって水の通りが悪くなった排水管に食べかすなどのゴミが流れていくことで、よりつまりが発生しやすくなるわけです。
また、食器用の洗剤や石鹸などを使用する中で発生する石鹸カスも、キッチンの排水管をつまらせる原因となります。
トイレの排水管がつまる原因
トイレの排水管がつまる原因はさまざまですが、代表的なものとしては以下のようなものがあげられます。
- トイレットペーパーなどの水に流せるもの
- アクセサリーなどの水に流せないもの
- トイレクリーナー
- おむつや生理用品
- 嘔吐物や食べかす
- 猫砂
- 尿石
アクセサリーなどの固形物やおむつ、生理用品などは水に流すことができないため、誤って便器の中に落としたり流したりしてしまうと、高確率で排水管をつまらせます。
トイレットペーパーや排泄物、トイレに流せるタイプのクリーナーは基本的に流して処理できますが、大量に流すと排水能力が追いつかず、つまることがあるため注意しなくてはいけません。
嘔吐物や食べかすには油が含まれるため大量に流すとつまる可能性がありますし、猫砂もつまりのトラブルを引き起こす代表的な製品の一つです。
また、尿が石化することで発生する尿石が排水管に堆積するとつまりを引き起こす可能性があります。
洗面台の排水管がつまる原因
洗面台の排水管をつまらせる主な原因としては、「石鹸カス」や「皮脂」があげられます。
洗面台では手洗い用の石鹸の他に洗顔などを使用しますが、その際に発生する石鹸カスが顔や手などから出る皮脂と混ざって徐々に排水管に堆積していき、つまらせてしまいます。
また、洗面台では、クレンジングオイルや整髪料、ヒゲ剃り用のクリームやジェルなどさまざまな製品を使用しますが、これらもつまりを引き起こす要因の一つです。
洗面台でヒゲを剃ってそのまま洗い流している場合、剃った後のヒゲも排水管のつまりを引き起こす要因の一つとなります。
浴室の排水管がつまる原因
浴室の排水管をつまらせる主な原因は、「髪の毛」や「体毛」、「石鹸カス」や「皮脂」です。
お風呂に入っていると、毎日何本もの髪の毛や体毛が抜けて浴室の排水管へと流れていくことになりますが、これらが石鹸カスや皮脂と混ざり、排水管の中に溜まることで排水能力が低下してしまいます。
これらを長期間放置していると、ドロドロとした粘り気のあるヘドロに変わっていき、最終的に排水管をつまらせ、汚水の逆流などを引き起こします。
排水管の経年劣化によってつまりが発生することも
排水管は消耗品であるため、10年以上経過すると徐々に経年劣化が進み、排水能力が低下していきます。
劣化が進んだからと言ってすぐにつまってしまうわけではありませんが、メンテナンスを怠ると、さらに劣化が進み、最終的につまる可能性があります。
排水管の劣化は、場所やつながっている設備の種類に関わらずどこでも発生するため注意が必要です。
つまりの原因で責任の所在の判断が変わるケースもある
解説してきたとおり、分譲マンションの排水管でつまりが発生したときの責任の所在は、建物の構造によって異なり、最終的にはマンションの規約で確認することになります。
専有部分に該当する排水管のつまりは部屋の所有者の責任で修理しなくてはいけませんし、共有部分に該当する排水管のつまりは管理会社や管理組合が責任を持って対処しなくてはいけません。
ただ、つまりの原因で責任の所在が変わるケースもあるため注意が必要です。
例えば、トイレに固形物を流したことで排水管でつまりが発生した場合は、共有部分の排水管であっても、トイレをつまらせた部屋の所有者が費用を負担して修理する必要が出てきます。
このように、つまりの原因によって責任の所在が変わるケースもあるので、共有部分の排水管だからと言って必ずしも管理会社や管理組合が対応しなくてはならないというわけでもないという点についてはしっかりと認識しておくようにしましょう。
分譲マンションの排水管でつまりが発生したときの対処法
実際に分譲マンションの排水管でつまりが発生した場合、何らかの方法で対処しなくてはいけませんが、具体的な対処方法としては以下の2つがあげられます。
- 自分でできる対処法を試してみる
- 管理会社や管理組合に連絡して業者に修理を依頼してもらう
それぞれの対処法について解説していきます。
自分でできる対処法を試してみる
分譲マンションの排水管のつまりは、自力で解消できる場合があります。
排水管のつまりに対して自分でおこなえる具体的な対処法としてあげられるのが、以下の2つです。
- パイプクリーナーを使う
- ラバーカップを使う
パイプクリーナーを用いる方法は、キッチンや浴室で発生する排水管のつまりに有効です。
正しい使用方法はそれぞれの製品によって異なりますが、排水管にパイプクリーナーを流し入れ、しばらく放置することで、排水管の内部に溜まったゴミや汚れが溶かされてつまりが解消されます。
ラバーカップを使った方法は、トイレで発生する排水管のつまりに効果を発揮する方法です。
「すっぽん」と呼ばれることも多いラバーカップをトイレの排水口に押し当てて、押したり引っ張ったりしてつまりの元を引っ張り出し、つまりを解消します。
これらの方法を実践したからと言って必ずしも排水管のつまりが解消されるわけではありませんが、一度試してみる価値はあるので、まずは実践してみてはいかがでしょうか？
管理会社や管理組合に連絡して業者に修理を依頼してもらう
自分でおこなえる対処法を試しても排水管のつまりが解消されない場合やつまりの原因を特定できないなどの理由で自分で対応するのが難しい場合、自分で対応するのを避けたい場合は、マンションの管理会社や管理組合に連絡して対処してもらいましょう。
原因がわからない状態で無理に自分で対処するとつまりを悪化させる可能性があるので、自分で対処するのを諦め、大人しく管理会社や管理組合に任せるというのも一つの手です。
管理会社や管理組合につまりの症状や状況を伝え、対処してもらいましょう。
まとめ
分譲マンションの排水管でつまりが発生した際の責任の所在は、それぞれのマンションによって異なります。
そのマンションの構造によって専有部分と共用部分のどちらに分類されるか判断される傾向がある一方で、最終的にはマンションの規約の確認が必要となるので、つまった場合は管理会社や管理組合に問い合わせるようにしましょう。
ただし、つまりの原因がハッキリしている場合や自分で対処できる場合であれば、パイプクリーナーやラバーカップを使って対処することも可能です。
自分で対処する場合、つまった場所によって適切な対処方法が異なるので、今回の内容を参考にしながら適切な方法で作業するようにしてください。
